浅野氏入城400年記念事業 平成30年度歴史講座「江戸時代の広島~浅野家と広島藩~」後期 第5回「書物と人と文芸と-江戸時代、広島の文化を支えた人々-」を平成31年2月16日(土)に開催しました。
その概要をご紹介します。
第5回「書物と人と文芸と-江戸時代、広島の文化を支えた人々-」
講師:県立広島大学人間文化学部教授 西本 寮子さん
今回は、書物に残された所蔵者の印や署名、落書きなどの調査から、広島藩の人々の生活や文化、また、広島藩の文教政策と庶民の学びとの関わりなどについて、具体的な資料を紹介しながら、お話をされました。
主に資料として紹介されたのは、呉・仁方(にがた)で庄屋をつとめた手島家の旧蔵書(入船山記念館所蔵)、呉浦塔之岡・青盛氏の文芸資料(入船山記念館所蔵)、賀茂郡上保田(かみぼうだ)で代々庄屋や割庄屋をつとめた平賀家の蔵書(賀茂郡黒瀬・平賀家蔵書、広島県立文書館寄託)、京橋町・保田(やすだ)家文書(広島県立文書館所蔵)などです。
学びへの情熱
京橋町・保田家の蔵書の中に、京都に住む和歌の宗匠 澄月が、6代目保田忠昌に宛てた書翰が見つかった。広島の町人が、京都の師匠に和歌の指導を頼むほど、領民の好学意識が高まっていることが感じられる。
また、調査資料の中には、厳島についての記載や作品がみられ、江戸時代の広島の人々にとっての厳島の存在感も感じることができる。
おわりに
このように、書物に刻み込まれている印や所蔵者の署名、これまで落書きとしてほとんど顧みられることのなかった情報が、実は生活に密着した商品流通の実態や、書物を媒介とした地域のネットワークなど、江戸時代の広島の人々の姿を如実に反映している資料であることがわかる。
広島は、原爆で多くの資料が失われたが、少ない資料を丁寧にみていくことで、江戸時代の広島の人々の豊かな生活を感じることができる、と締めくくられた。
【関連本】