公開日:2015年02月19日
わからないことを調べるとき、あなたは何で調べますか?
インターネットが現在のように普及する前は、まずは百科事典や広辞苑で調べたのではないでしょうか。言葉の意味を知りたいときは国語辞典、新聞記事は原紙や縮刷版、歴史や人名はそれぞれの事典でといったように、調べたいことに応じて様々な図書や新聞・雑誌を活用していました。
では現在はどうでしょう?ほとんどの人が、まずはインターネットの検索エンジンでキーワードを入力して検索しているのではないでしょうか。図書館職員である私たちも例外ではありません。気軽に手がかりが得られ、その手がかりから探している資料や情報に早くたどりつくことはよくあることです。その反面、検索結果が膨大に表示され、どの情報を選べばいいのか迷うことも少なくありません。
この本は、「学術上の調査・研究、情報検索に役立つサイトとデータベースを紹介するガイド」として出版されました。文献を探すポイントと、図書、新聞・雑誌、灰色文献(通常の出版物流通ルートに乗らない資料、地域情報や企業情報など)、視聴覚資料と4項目に分け、それぞれの有効なサイトとデータベースを紹介しています。
例えば、国立国会図書館が提供する検索サービス「国立国会図書館サーチ」は、図書に関する情報(書誌情報)や所蔵を調べるのに有効で、図書の所蔵はもちろんのこと、雑誌記事や論文も探すことができます。
ビジネスに関連したサイトでは、金融庁が提供し有価証券報告書が閲覧できる「EDINET」、当日から1か月以内の官報を全文検索できる「官報検索」、各府省作成の政府統計が閲覧できる「e-Stat」などがあり、目的に応じて有効に使えそうです。
また、ビジネスに限らず、テーマから新書を探す、あいまいな記憶から絵本を探す、国語の教科書に掲載された作品を探す、歌詞や楽譜を探すなど、知っておくと便利なサイトも紹介されています。
調べ物のお手伝いをする「レファレンスサービス(調査相談)」は図書館の主な業務の一つで、依頼があれば図書やインターネットを駆使して職員総動員で調べます。でも、有効なサイトを活用することで、自分で回答や手がかりが得られるだけでなく、さらにはサイト内の他の情報から調査が展開していくこともありそうです。
情報は探して終わりではなく、集めた情報から必要なものを選び、それが活用されてこそ初めてその情報が活きてきます。ぜひこの本を参考にして、興味のあるサイトをのぞいてみてください。役立つ情報が見つかるかもしれません。
公開日:2015年01月16日
公共図書館は無料で本を読んだり借りたりできるところです。でも、それだけではなく、地域住民が抱える様々な課題の解決をお手伝いするところでもあるのです。
「図書館海援隊」は、平成22年(2010年)1月、当時文部科学省生涯学習政策局社会教育課長であった著者の呼びかけに応じて集まった有志の図書館7館で結成されました。この本は、その「図書館海援隊」の発足の経緯からこれまでの活動を振り返り、今後の図書館のあるべき姿について問題提起をすることを目的に記されたものです。
この「図書館海援隊」プロジェクトは、平成20年(2008年)の年末から平成21年(2009年)の年始にかけて問題となった「年越し派遣村」の様子を見ながら、「最低限の衣食住を提供されたからと言って、さあ次の仕事を探しましょう、と言われてもそんな気持ちになれるだろうか?」と感じていた著者のもやもやとした気持ちが発端となっています。その後、著者は社会教育課長となり、各地の公共図書館に足を運んで知り合った元気な司書たちに「派遣切りなどで失業した人々に対し、図書館として何かできることはありませんか?」と、この「もやもや」をぶつけてみます。そして、一人の司書から送られてきた「労働者の直面する問題と図書館のできること」と題された1枚の表を見たとき、「これなら、何かできるかもしれない」と確信したところから「図書館海援隊」が始まりました。
当初は貧困・困窮者向けの支援に重点を置いていましたが、その後、関係部局と連携しながら医療・健康、福祉、法務等に関する支援を行っている図書館も対象となり、現在では50館の図書館が「図書館海援隊」に参加しています。(参加館一覧は文部科学省のホームページで確認できます。)
また、地元のJリーグクラブチームと連携を行う「図書館海援隊サッカー部」や、NPO法人キャンサーリボンズとの連携を行う「リボン部」など派生ユニットも誕生し、図書館海援隊はその活動の幅を広げています。
この本には、参加館の活動事例も詳細に掲載されており、地域に根ざした特色ある取り組みを知ることもできます。
しかし、これらの業務は図書館法第三条の規定に沿ったものであり、「わざわざ海援隊を名乗らなくても、およそどこの図書館でも当たり前のように実施されていなくてはならない、図書館の本来業務なのである。」と著者は語ります。そして、地域住民に「『近くに本を借りられるところがあると楽しい』からでなく、『自分たちの生活を改善し、自分たちの住む街を良くするためには、図書館が役に立つ』から図書館が必要」だと認識してもらうために、司書はスキルアップを図り、館長は環境を整えるためのリーダーシップを取らなければならないと指摘します。
図書館を利用される方には、図書館をさらに便利に使うための参考となり、図書館で働く者には、日々の業務を見直すきっかけとなる一冊です。
さて、広島市立中央図書館も図書館海援隊に参加しており、図書館の資料や情報により、相談サービスや様々な機関と連携しながら事業を実施し、課題解決のお手伝いをしています。
ビジネスに役立つ資料や商用データベースを使用できる端末を設置している参考閲覧室のビジネス支援情報コーナーや、中小企業診断士を迎え毎月第2土曜日に実施している起業や経営の相談を受ける「ビジネス相談会」、各機関と協力して実施する講座などはきっと仕事のお役にたてます。また、広島資料室の広島3大プロコーナーでは、サンフレッチェだけでなく、カープ、広島交響楽団の資料を集め、各団体と連携した事業で地域を盛り上げ、自由閲覧室Aの闘病記コーナーでは病名別に分類された闘病記の他に各患者会資料やキャンサーリボンズから提供を受けたがん患者に役立つ資料も設置しています。
「困ったときには図書館へ」。
皆様のご来館をお待ちしております。
公開日:2014年12月16日
Be the first penguin(ファーストペンギンであれ)。
株式会社デジタルガレージは、この「ファーストペンギンの精神を持て」を社員に課し、社是にもしています。ファーストペンギンとは、どういう意味なのでしょうか。
ペンギンは天敵がいる海に飛び込んで、エサを獲らなくてはいけない一方で、自分たちが食べられてしまうリスクもあります。その中で意を決して、海に飛び込み、先頭に立って突き進む一羽のペンギンがいます。これをファーストペンギンといい、リスクのあることにも勇気と強い意志を持って真っ先に挑戦するという先駆者を意味しています。
デジタルガレージは、1994年、林郁氏、伊藤穰一氏が共同で、代々木富ヶ谷の車庫で創業し、日本で初めて個人のホームページを開設したことに始まります。その後、ロボット型検索の技術を手がけるインフォシーク(Infoseek)の事業の立ち上げ、コンビニエンスストアでの決済サービス、カカクコムやツイッター社への出資、インキュベーション事業など、常に時代の一歩先を進むことで、新しい市場を切り開いています。
この本は、インターネット企業のデジタルガレージの創業20年の歴史とともに、インターネット業界をどのように牽引してきたか、どのようにインターネットを普及してきたかの歴史について書かれています。また、林氏と伊藤氏の様々な分野のキーパーソンとの対話部分からは、インターネットビジネスの今後の可能性を読むことが出来ます。
林郁氏は、現在デジタルガレージグループのCEOであり、また伊藤穰一氏は取締役で、2011年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長を務めています。
注目すべき内容として、インターネットが世の中に広まる前と広まった後の状況を比較して、「誰もが、世界を変えられる商品やサービスを生むチャンスを得られるようになった。」という箇所があげられます。今、イノベーションを起こすのは、これまでの大企業の研究所から、学生やスタートアップ企業に移ってきていて、今後日本のスタートアップ企業を盛り上げるにはどういった工夫や仕掛けが必要かという点も注目すべき内容です。
こうした「ファーストペンギン」という先駆者の行動指針を知ることで、業界を超えて、これからの起業に大きなヒントを見つけることができるかもしれません。
公開日:2014年11月18日
タイトルに引き寄せられて手に取った本で、表紙の写真も作業着姿の人々が並び、その後ろにまるで巨大船のような機械が見えていて印象的です。この本は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた日本製紙(にっぽんせいし)石巻工場の、奇跡の復興を記録した物語です。
日本製紙は、日本の出版用紙の約4割を担い、世界屈指の規模を誇る石巻工場はその主力工場として震災前には一年に約100万トンを生産していました。ところがあの日、従業員までもが「工場は死んだ」「きっと日本製紙は石巻を見捨てる」と思うほど工場は絶望的な状態となりました。しかしながら、奇跡的にも、当日出勤していた1306名の従業員は全員生存が確認でき、工場も火災から免れることができました。この奇跡から彼らの復興に向けての戦いが始まったのです。
避難場所での生活、工場内の瓦礫の撤去、工場から流出して使い物にならなくなった巨大ロール(巻取(まきとり))の回収など、従業員は工場存続の不安を抱えつつも復旧の作業を進めました。しかし先の見えない作業が長期化するにつれ、不安や疲労でモチベーションも下がり始めます。そんな従業員に会社は、なんと半年後の機械稼動を宣言します。まずは1台。それでも誰もが無理だと思いましたが、石巻のため、出版社のため、そして本を待っている読者のため彼らは一致団結し、2012年には生産量を約85万トンまで戻しました。
この工場で作られた紙が使われている本は、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、文庫本では百田尚樹の『永遠の0(ゼロ)』、東野圭吾の『カッコウの卵は誰のもの』、そしてコミックスでは『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』など馴染みのある作品ばかりです。もちろん、辞書、単行本、雑誌などに使われる紙にも石巻工場の技術が結集されています。
表紙の巨大機械「8号抄紙機(しょうしき)」のオペレーターである佐藤憲昭(さとうのりあき)氏は言っています。「いつも部下たちにはこう言って聞かせるんですよ。『お前ら、書店さんにワンコインを握りしめてコロコロコミックを買いにくるお子さんのことを思い浮かべて作れ』と。小さくて柔らかい手でページをめくっても、手が切れたりしないでしょう?あれはすごい技術なんですよ。」
タイトルの「紙つなぎ」とは、抄紙機に原料のパルプが吹き付けられたあと、様々な工程を経て最後のリールに巻きつくまでを言い、熟練のオペレーターが操作しても一度に通ることはなかなか難しいのだそうです。職人の、決して妥協を許さないものづくりの話でもあります。
工場でできた紙は、出版社で本となって私たちの手元に届きます。が、何気なく読んでいる本の向こうには、石巻工場で働く人たちにつながっているように感じられます。そしてこの本からは、まるで石巻工場の人たちの声が聞こえてくるようです。ぜひ、この本を手に取って、紙の感触を確かめながら読んでみてください。
公開日:2014年10月15日
「すべての悩みは『対人関係』の悩みである。」
私たちは、家庭でも、学校でも、職場でも、常に他者を意識し、自分を他者に認めさせたいと思いながら生きているのかもしれません。だからこそいろいろな悩みが生じるのです。この世で一人っきりであれば、悩む必要はない?ただ、そんなことは不可能です。
この本は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの心理学を、悩み多き「青年」と、「世界はシンプルである」と説く「哲人」の対話形式にまとめたものです。物語を読み進めるうちにアドラーの思想が自然と心に落ちてきます。
私も青年と同じく、誰からも嫌われたくないが故に、他者から自分に期待されている役割は何なのかということばかりに気をとられ、それに合わせて生きてきたような気がします。他者の反応に一喜一憂の日々。
それを哲人に「ほんとうの自分を捨てて、他者の人生を生きることになる」、「他者もまたあなたの期待を満たすために生きているのではない」、「相手が自分の思うとおりに動いてくれなくても、怒ってはいけません。それが当たり前なのです。」と説かれ、返す言葉もありませんでした。
「大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか。」「あなたにできるのは『自分の信じる最善の道を選ぶこと』、それだけです。その選択について他者がどのような評価を下すのか、これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。」
そう考えれば、他者にどう思われるかをあれこれ心配するのは無意味なことであり、自分の信念のままに生きればよいというシンプルな構図が目の前に開けます。
青年が哲人との対話でたどり着いた答えは非常にシンプルです。
「ただし、実践するのは難しそう。」そう思うのは私にまだ「勇気」が足りないからかもしれません。
「幸せになる勇気」は「嫌われる勇気」。
アドラー心理学の入門書として最適な一冊です。
公開日:2014年09月15日
書名であり社名でもある「和える」とはどういった意味からきているのでしょうか?
著者は「和える」とは「日本の古き良き先人の知恵と、今を生きる私達の感性を和える」という意味だと説明しています。焼き物の割れにくさや本藍染の抗菌作用などの日本の伝統工芸品のすばらしさを発見し、子どものころから伝統工芸品を使ってもらい、日本の伝統を21世紀の子どもたちへ伝えていきたいという強い想いが社名「株式会社和える」の由来になっています。
創業のきっかけは高校まで茶華道部に所属して伝統工芸品に囲まれて過ごす中で興味を持ち、大学入学後には、日本の伝統工芸品などの情報発信の仕事をするようになったことからです。そして伝統工芸産業の職人との出会いなどが更に創業に結びついていきます。伝統工芸品のすぐれたところを取り出し、それを使ってもらい伝統産業そのものをアピールしていくことで、職人の仕事も継続的に支えることにつながっていけると考えています。そして日本の伝統工芸品を未来につなげていくことを期待し、ホンモノを子どもたちに伝えるという意味で、「伝統産業×赤ちゃん・子ども」というこれまであまりビジネスとして成り立っていないコンビネーションに可能性を見つけ、日本の伝統産業で0から6歳の未就学児向けのブランドを立ち上げます。
この著者がすごいのは、まずその行動力です。たとえば大学入学後すぐに、受験したAO入試の体験を、本にするために企画書を出版社に持ち込み、伝統産業のことを知るため職人を現地に訪ねるときも、企画書を出版社に持ち込み、出版を実現させていきます。また、伝統産業の職人の現場に出向いて、自分が何をやりたいかを伝え、ロゴを作り、あるいは、「こぼしにくいコップ」などの商品を製作していくなかで、人をどんどん巻き込み、コミュニケーションを繰り返し行うことで想いを形にしています。この著書には、自分が思いついたことを実行できるかを考え、企画書をつくり提案して、困難にぶつかりながらも、創業に至った具体的な行動や感じたことなどが詳細に書いてあります。こうした著者が想い続け行動し続けるストーリーは、創業について参考になるだけでなく、読んだ人が自分も常識にとらわれずに、思いついたことを行動に起こしてみようと思える一冊になっています。
ちなみに、著者自身は「和える」を立ち上げる前にビジネスとしての評価を受けるために、数々のビジネスプラングランプリに参加してブラッシュアップした経験の持ち主ですが、それが評価され、当館が開催している「高校生ビジネスプラングランプリ ビジネスプラン作成講座」で共催している日本政策金融公庫が主催した「第1回高校生ビジネスプラングランプリ」の審査員に選出されています。
公開日:2014年08月15日
著者の佐藤オオキ氏(表紙写真)は、1977年カナダで生まれ、早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、同大学大学院修了後の2002年にデザインオフィスnendoを設立、その代表を務めています。国内外の企業を相手に250を超えるプロジェクトを抱え、建築、インテリア、家電製品、雑貨、パッケージなどのグラフィックデザインまで、ジャンルを問わず数々のアイデアを出し、今最も世界が注目しているデザイナーの一人です。
「nendo」の由来はもちろん「粘土」で、「形や色を無限に変える粘土さながら、(卒業旅行の)ミラノで感じた自由な発想と創作活動を実現したいという想いが込められている。」のだそうです。
この本は、副題が「佐藤オオキ nendo 10の思考法と行動術」とあるように、第1章「nendoの思考法」では、①「面」で考える ② 一歩「下がる」 ③「違和感」を生む ④ 均衡を「崩す」 ⑤ 見せたいものは「隠す」 ⑥「ゆるめ」につくる ⑦ とにかく「集める」⑧「休み時間」に休ませない ⑨「他人丼」を見つける ⑩ そこにあるものを「使いまわす」をタイトルに、それぞれ具体例を挙げながら書かれています。
例として、消臭スプレーのモデルチェンジ(①)など馴染みのあるものから、海外ブランドのショーウインドーディスプレイ(③)や、ニューヨーク近代美術館などに収蔵されている作品(⑥)、さらに伝統工芸とのコラボレーション(⑩)など数多く挙げられており、nendoの柔軟なアイデアがどのようにして生まれたのかがわかりやすく紹介されています。
第2章「nendoの行動術」では、① 状況を「耕す」 ② クライアントと「育てる」 ③ アイデアを「収穫する」とし、基本的な考え方や取り組み方について書かれています。
佐藤オオキ氏は「はじめに」に、「デザインとは問題解決のための「新しい道」を見付ける作業」「こういった「新しい道」を見付けることによって、クライアントに価値を提供するのがデザイナーの役割なのです。」と書いています。
nendoがクライアントとプロジェクトを完成させるとき、それは決して相手方を考えずにデザインを押しつけるのではなく、同じ方向性と価値観を持って作り上げていき、最終的にクライアントが望んだ以上のものを提供していきます。彼は、「(商品デザインによる)短期的な利益以上に重要なのは、企業や商品のブランド価値を高めたり、(略)社内の意識改革や業界全体の活性化がなされることです。」とも述べています。つまり、nendoのデザインが始まりとなり、企業がプロジェクト完成に向けて新たなスタートを切っているのです。紹介されたプロジェクトの中には、なぜnendoに依頼し、そのアイデアによってどのような変化がもたらされたか経営者のコメントも載せられており、興味深く読むことができます。
「何かいいアイデアはない?」「新しいアイデアが浮かばない」この会話は職場でよく耳にします。しかしながら、アイデアは探してもなかなか見つかるものでもありません。そんなときは、ぜひこの本を開いてみてください。何かきっかけが見つかるかもしれません。
公開日:2014年07月15日
「1分50円」。
この数字は会議時間中にかかる一人当たりのコストです。
書道家、武田双雲の力強い題字からも思いを受け取ることができるのですが、著者はこの本で、「会議の『数』と『時間』と『参加者』を2分の1に削減し、『会議コスト』を90%削減」する「脱会議」を提唱しています。
会議のために資料を作り、会議のために打ち合わせをして、会議のために根回しをする。冒頭で紹介した会議中の人件費だけでなく、その準備にも費用はかかっており、そのコストのツケは顧客が支払っているのです。ただ会議があるから参加する「会議ペット」として、会議のついでに営業をしていては本末転倒。
これは著者自身が「会議中毒」と言っていいほどの職場に身を置き、上司に言われるがままに会議漬けの日々を送り、組織の成果を実感することもなく、喪失感と空白感の日々を過ごした経験と、コンサルタントとして多くの企業の会議を見てきた実績から得たものであり、この本を読んでいると、無駄な会議を削減することが企業にとってどれだけ有益かということがストレートに伝わってきます。
もちろん会議がすべて不必要なわけではありません。既存の会議をPDCAサイクルに基づき分類し、整理する方法や、その目的にふさわしい効果的な会議の開催方法、会議を減らすために必要な周りとの調整方法、また、会議が減った後、その空いた時間で何をすべきなのかということもわかりやすく記されています。
少子高齢化が進み、現場で働く若い労働力が減少していく昨今、ミドルマネジメント層が会議だけをしていればすむ時代は終わりました。
「脱会議」をすすめ、空いた時間を現場で過ごし、お客様のために使う、部下のために使う。
会議のことだけでなく、全ての仕事との向き合い方を考えるきっかけとなる一冊です。
公開日:2014年06月15日
この本の著者は通訳者です。
ご存じのように、通訳という仕事は、異なる言語を話す人たちの間に立って、会話を翻訳して相手に伝えることです。著者は、日本における会議通訳者の草分け的存在であり、先進国首脳会議をはじめとする数々の国際会議やシンポジウムの同時通訳をされてきました。
この本は、彼女が通訳者としてのさまざまな現場に立ち会う中で考えてきた「言葉によるコミュニケーションとは何か」、「発言すると伝えるとの違いは何か」などについて具体例を挙げて書かれたものです。
2020年の東京五輪開催に向けての素晴らしいスピーチで記憶に新しい太田雄貴選手ですが、今回、彼の言葉が多くの人の胸を打ったのは太田選手の英語力だけではなく、「自分の意見を聞いている相手に理解させ、賛同してもらうという『伝える力』だった」と紹介しています。
著者によると、この「伝える力」とは、「『誰かに伝えたい』と思う内容(コンテンツ)を持っているか」、「それを伝える熱意があるか」、「話を相手にわかりやすくするための論理性・構成力があるか」の3点だということです。
プロの通訳者として、海外の国家元首や日本の総理大臣、またはサッカーのデビット・ベッカムやホーキング博士等の通訳を行った時のエピソードも交えながらの文章はとても読みやすく、単に言ったことをそのまま伝えるだけではなく、通訳を通して聞く人たちに「語られている世界の情景が拡がるぐらい豊かな言葉」に翻訳して伝えたいという著者の思いが真摯に伝わってきます。
今日ではメールやSNSなどの普及によって、直接相手と対峙してコミュニケーションするときの「伝える力」が衰えていると言われていますが、ビジネスにおいても、きちんと相手に思いを伝えることから、仕事が始まるのではないかと思います。「どう話せば相手に伝わるか」という時に、是非参考にしていただきたい1冊です。
公開日:2014年05月15日
この本は、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏(かなりの読書家で知られている)が経済学者を先生に迎え、「幸福」「結婚」「格差」などをテーマに、経済学をわかりやすく学ぶテレビ番組「オイコノミア」の2012年4月から2013年2月までの放送をまとめたものです。
「オイコノミア」とは、古代ギリシャ語で「家」という意味の「オイコス」と「法律」という意味の「ノモス」から成り、エコノミクスの語源となった言葉です。「経済学」は難しい学問という印象を受けますが、この本では、「幸福を経済学でひもとくと」「スポーツは経済学で成り立つ!?」「経済学で賢い人生設計をする」など身近なテーマを経済学の視点でとらえ、実はビジネス以外の様々な場面で経済学が活用できると書かれています。
ここで質問。「夏休みの宿題はいつやるタイプ?先にやる?後にやる?」
夏休みの宿題と貯蓄行動には深い関係があり、宿題を後回しにした人は貯蓄しにくいという調査結果が出ているそうです。目先の楽しみを我慢できない人は誘惑に負けてしまって貯蓄できないというのです(この傾向を経済学では「現在バイアス」と呼ぶ)。
では、もらうとしたら「今日の1万円と、1週間後の1万100円、どちらがいいですか?」「1年後の1万円と1年と1週間後の1万100円、どちらがいいですか?」
経済学者で大阪大学の大竹文雄特別教授は、前者の質問では今日の1万円、後者の質問では1万100円を選ぶ人が多いと言っています。そして、後者の質問で「1年と1週間後の1万100円を選んだ人の多くが、1年経過してあと1週間となったときに「やっぱり1万円ください」と意思決定を変更することを意味する」のだそうです(これを経済学では「時間非整合」と呼ぶ)。この「現在バイアス」、「時間非整合」を考慮すると、「遠い将来の貯蓄目標を達成したいなら天引き貯蓄をするなど工夫が必要」とアドバイスしています。
この他にも、使っている製品やサービスの乗り換えが面倒に感じるのはなぜか、商品の価格の決まり方、恋愛や結婚を経済学で解剖すると?給料はどうやって決まる? などについて、経済学の観点からわかりやすく解説しています。
又吉氏はまえがきで、経済学は人生の「危険な場所や迷いやすい場所を教えてくれる地図になる」そして「人間の行動を観察し、再考し、新たな方法を生み出し続ける『経済学』は、人類の地図や護身術のようで、とても頼もしく思える」と述べています。ぜひこの本を読んで、経済学を身近に感じてみませんか。人生設計やビジネスのヒントが見つかるかもしれません。