公開日:2018年06月21日
この本は、本造りに携わる印刷会社の営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー等を取り上げた小説です。著者は、2015年5月から約3年、実際に多くの印刷会社の人々に取材して、それぞれの仕事の工程や背景を丁寧に聞いて描いています。ペーパーバックや電子書籍と印刷会社の関わり等、業界の展望にも触れています。
主人公の豊澄印刷株式会社営業部の浦本学は、顧客である出版社と打ち合わせし、印刷所の状況等をみながら、全体を調整する役割を果たしています。その彼が会社説明会で就活生に将来の夢について聞かれた時に、「印刷がものづくりとして認められる日が来ること」と答えます。本はまず作家が原稿を書き、編集者が出版の企画を立て、デザイナーと相談して本の仕様が決まるが、印刷会社や製本会社は本を刷るのではない。本を造る「メーカー(ものづくり)」であり、夢と責任のある仕事だとも話します。浦本がこの言葉の持つ意味を自問自答していくことからこの物語は始まります。それに対峙して、同じ営業部の仲井戸光二は、夢は「目の前の仕事を手違いなく終わらせること」「印刷機の稼働率を上げること」と答えます。浦本は考え方の違いから仲井戸に反発しながらもよき先輩として一目置いています。このふたりが仕事の様々な困難な場面で真剣にぶつかりながらも、次第にお互いを認め合うようになっていくところは圧巻です。
本造りの現場がわかると、多くの人の思いの詰まったものとして、「本」をより身近に感じられるようになります。
「どう仕事をするかは、どう生きるかに等しい」と、好きな本造りに挑む主人公は語っています。仕事にかける熱い思いを感じながら楽しめる一冊です。
公開日:2018年05月16日
「僕は小さい頃から、ほとんど何かをがんばったことがない。」という著者のphaさんは、京大に現役合格し、就職後28歳で会社を辞め、無職の生活をされていました。その間ブログが人気になり、5年間で5冊の書籍を出版し、現在はシェアハウスの運営もされています。
著者は「大体のことはなんとなくやっているうちにうまくいった。」と述べ、その理由として人生の早い段階で勉強を楽しむやり方を身につけることができたことを挙げています。この本では著者の「がんばらずに、なんとなくうまくいく勉強法」の実践方法が書かれています。
例えば、第1章「情報を整理するインプットの技術」では、自分の興味がない分野の勉強をしなくてはいけない時の方法が紹介してあります。まずは興味を持つために「それをおもしろがってやっている人を見ることで、その世界の空気をつかむことを目指そう。」「そのジャンルの専門用語を覚えるのもいい。」そして、「知識をかきまぜる」ように本を3冊読み、「牛の消化」みたいに何度も反芻して覚えると書かれています。また、すぐに実践できそうな「読書メモ」の取り方も紹介してあります。
第2章「頭を整理するアウトプットの技術」では、言語化することの重要性、知識を自分のものにするコツ、アイデアの出し方などが書かれています。著者の実体験をもとにした「ブログの読者」獲得法にも触れています。
年度が替わり、新しいことを覚えなくてはならない場面もあると思います。"なんとなく"うまくいく勉強法を使い、覚えることを楽しんでみてはいかがでしょうか。
公開日:2018年04月25日
インターネットが普及して既に20年近く経ち、検索エンジンに調べたい情報に関するキーワードを入力すると、大量の情報が提示されるという、便利な時代になりました。ただ、あまりにも情報が多く、その中から、本当に必要で信頼できる情報を見つけ出すにはどうすればよいのか、迷うこともあると思います。
本書は、情報があふれている「情報過多時代」において、欲しい情報を効率的・効果的に調べるスキルを身につけるための入門書です。知財情報コンサルタントとして活躍する著者から、どのような情報源を調べれば良いか、また検索エンジンを使うための具体的なテクニック、さらに、情報収集するために最も重要な「情報感度」を磨く方法などをわかりやすく学ぶことができます。
第2章「情報感度は誰でも身につけることができる」では、「調べるチカラ」をつけるための情報ネットワークを、①インターネット、②新聞・書籍など、③人に整理し、この3つの情報ネットワークをバランスよく使い分けることが必要であると述べています。さらにこのことは、第4章「インターネットで調べる」、第5章「インターネット以外のネットワークから調べる」で詳しく説明されています。
第5章の中では、情報感度を磨くためには「人」とのつながりが大切であり、まず家族や同僚などの身近な人とのコミュニケーションから情報収集をはじめることが提案されています。そして、人とのつながりを継続するには、自分自身も情報を発信していくことの重要性に気づかされます。
情報収集スキルは、ビジネスパーソンだけではなく、個人としての夢や目標を実現するためにも役立つ必須スキルである、と著者は言います。「調べるチカラ」を高め、さまざまな場面で情報を活用することは、より豊かな人生を送ることにつながるのではないかと思わせてくれる本です。
公開日:2018年03月16日
「誰かのためになにかせな、あかん」が、金谷氏の信念です。
金谷氏は、デザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を経営し、企業の広告デザインに携わる傍ら、経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しに取り組み、マスコミなどで取り上げられ注目をあびています。著者自身が起業して間もないころに、自社製品の開発に苦労した経験がその取組がきっかけです。どんな会社でも「強み」があり、それを見つけておけば、生き残りの「手」として活かしていけるといいます。
眼鏡の産地として有名な福井県鯖江市の会社キッソオの債務超過の窮地を救ったのは、眼鏡フレームの加工法を活用して開発した「ギフトとして贈られるミミカキ」でした。
その勝因は、元々の業界とは違う分野に視野を広げ、今ある設備でできるコトをやり、パッケージを含めたトータルなデザインにこだわった商品が生まれ、その商品誕生の背景にある技術や思いを「ストーリー」として伝える仕掛けをつくったからです。デザインとは、コト(技術)、モノ(意匠)、ミチ(販路)の一連を「考動」(考えて動く)していくことだと、金谷氏は主張します。
他にも、愛知県瀬戸市の手編みのセーターを思わせる器、静岡県熱海市の食材を切るまな板と食事を盛り付けるプレートの2つの顔をもつウッドプレート等、伝統産業などの特徴を最大に生かしながら、スタイリッシュな今の暮しにフィットする商品を提案しています。その商品をとおして、作り手の自信を取り戻した顔や、使い手の心ときめく素敵な暮しの道具を使う嬉しそうな顔が見えてきます。モノづくりやコトづくりを通して、人の「キモチづくり」もしています。
この本を読んでいただき、この広島の地元産業でも何か「強み」を発見し、新たな事業につながるヒントになればと思います。
公開日:2018年02月16日
著者の菅原洋平さんは、脳リハビリテーションを専門とする作業療法士です。この本は、著者の仕事であるリハビリテーションの技術と考え方を使い、脳と運動の関係について分かりやすく解説してあります。
パート1「ミトコンドリアを増やす」では、脳に栄養を届ける運動、よい睡眠をとるコツなど、脳の基本的な能力と運動について書かれています。
パート2「自律機能を高める」では、自律神経を整える効果的な運動方法について、運動する時間、簡単な呼吸法などが紹介してあります。
パート3「認知機能を高める」では、目の動きと集中の関係から脳の働きについて、なぜトイレに行ったときにいいアイデアが沸くのかなどの例を挙げて解説してあります。
また、脳は「動作の記憶」を自らが作ることによってバージョンアップするということです。例えば、仕事以外に勉強をしたいと思っているなら、帰宅したらまず机に座ってちょっとだけ手をつけてから休む。こうした行動をとることにより、脳は次に勉強をするという作業の予測ができ、行動に移しやすくなるそうです。
このように著者は、全体を通して、運動が脳を活性化するのはなぜかを科学的な事実をもとに説明し、日常生活に効果的な脳の使い方について触れています。
この本の例を実践することで、運動で脳を変え、日常生活を整え、仕事の効率が変わるかもしれません。
公開日:2018年01月28日
ニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンのテート・ギャラリーなどの大型美術館には、社会人向けのギャラリートークという、キュレーター(美術館等の専門職)が展覧会の作品の見どころ、制作にまつわる逸話などを解説してくれる教育プログラムがあります。アート関係者によると、これまで旅行者や学生で占められていた参加者の中に、スーツに身を包んだビジネスエリートの姿をよく見かけるようになってきたとのことです。
美術館とビジネスパーソンという、一見あまり関連のなさそうなこの組み合わせですが、こういった動きは、全世界的なトレンドとなっているそうです。
なぜ、世界のエリートは「美意識」を鍛えるのでしょうか?
本書では、この大きな問いに対して、多くの企業・人のインタビュー、フィールドリサーチなどの結果をもとに具体的な理由を丁寧に答えています。
現在のように変化が速い世界では、システムの変化にルールの制定が追いつかず、明文化された法律だけを拠り所にした判断や、「論理」「理性」に軸足を置いた経営では舵取りをすることができない状況が起きています。不安定な社会でクオリティの高い意思決定を継続的にするためには、法律やシステムだけでなく、「真・善・美」(それぞれ、学問、道徳、芸術の追求目標と言える三つの大きな価値概念)を判断するための「美意識」が求められます。論理的にシロクロのはっきりつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の「美意識」しかない、と著者は言います。
第6章の「美のモノサシ」では、「美意識」を全面に出して成功した日本企業としてマツダを例に挙げ、マツダ車の「日本的美意識」を表現したデザインが世界的に評価され、売上高や営業利益などの業績にも貢献するに至る戦略などが紹介されています。
「美意識」は、絵画などアートを見る、哲学に親しむ、物語や詩を読むことなどによって鍛えることができるそうです。例えばアートを見ることによって観察力が向上し、詩を読むことで比喩の引き出しが増えるとも言っています。
美術や音楽、文学などの芸術文化を楽しみ、親しむことは、人生を豊かにしてくれるだけでなく、ビジネスの大切な場面でも、理論だけでない総合的な判断をするうえで大きな力を発揮するものであることを教えてくれる本です。
公開日:2017年12月17日
「グーグルアース」、「イングレス」、「ポケモンGO」を生み出したジョン・ハンケ氏の初の伝記です。ジョン・ハンケ氏は、1966年米国テキサス州に生まれ、起業家で、ナイアンティック社のCEOで、常に革命的なプロダクトを世界に送り出し、人々からの注目をあび続けています。
この本には、ジョン・ハンケ氏が、子どものころにSF小説や映画に親しみ、宇宙や未来の物語を空想したり、高校時代に、黎明期であったパーソナルコンピュータやゲームと出会い、「自分でゲームをつくろう」とプログラミングに夢中になったことが、書かれています。
「グーグルアース」や「グーグルマップ」、「グーグルストリートビュー」といったサービスがどのように誕生したのか、社会現象になった「ポケモンGO」がどのようにつくられたのか、その華やかな成功の裏にある経営者、プログラマーとしての様々な葛藤について、丁寧に淡々と紹介されています。そこには人間関係を大切にしていること、禅や仏教からインスピレーションを得ていることにもふれています。
また、「イングレス」に込めた思想、つまり「世界がゲームの舞台である」、「動いてあそぶ」、「現実世界の友情をつくる」、「あらたな視点から街を見る」の4つの考えから、「ひとびとをもっと外に向かせ、自然や世界のうつくしさにきづいてもらいたい。子どもがスマホと接すると、屋外にいてもあの小さな画面をずっとみているような現状をなんとかしたい」というジョン・ハンケ氏の強い思いを知ることができます。
ジョン・ハンケ氏は、なにかつくりたいこと、やりたいことがあったら、「Make Them.つくってください。それだけです。」「何をやるにしても『自分を燃やし尽くせ』」と言っています。「好きな道をえらんで生きてほしい」というメッセージのつまったジョン・ハンケ氏の半生の伝記を読んでみませんか。
なにかをつくりたいすべての人や、なにかを成し遂げたいすべての人に贈りたい一冊です。
公開日:2017年11月22日
現在、職場にマイボトル(水筒)を持って行くことが特別ではなくなってきました。この「マイボトル」の仕掛人が著者の藤本智士さんです。兵庫県在住で秋田県発行のフリーマガジン「のんびり」、webマガジン「なんも大学」の編集長をされ、地方からその魅力を発信しています。
この本は、「ローカルメディアとは、あなたです」という項目から始まります。「編集」「メディア」共に狭義な意味ではなく、広義に捉えています。著者は「編集力とは「メディアを活用して状況を変化させるチカラ」つまり編集というのは手段であって目的ではない」とし、また、様々なプロジェクトは「手前の目標ではなく、理想とする未来の強いビジョン」が必要と述べています。それを作ることよりも、作った後に世界がどう変化するかの方が大切ということです。
秋田に関わるのは「秋田県が少子高齢化・人口減少日本一」だからと言い、少子高齢化が社会問題となる中、「その先頭を走る秋田は、まごうことなき日本の未来のトップランナーです」と発想を転換して、雑誌等様々な手段で地方の魅力を発信する著者の編集術も紹介しています。後半には編集術を使い実現した秋田県出身の木版画家の美術館の例も書かれています。
編集とは活字の世界だけではなく、未来のビジョンの実現に向けた手段であり、その力を活用し情報を発信している著者の魔法の編集術や視点は、広島で暮らす私たち自身にも活かせるのではないでしょうか。
公開日:2017年10月29日
「情報過多社会」、「ストレス過多社会」と言われる現代、元気にたくましく生きていくにはどうしたらよいのでしょうか?
この本では、法学と言語学を軸に、社会心理学、脳科学などのさまざまな学問分野を融合した研究を展開する明治大学法学部教授の著者が、身体とやる気をコントロールするための科学的根拠(エビデンス)のあるアクションを、38項目で紹介しています。
「やる気を生むには、まず身体を動かすこと」(リベットら脳科学者の研究)、「心のざわつきやモヤモヤは「不安の原因」を特定し、「やるべきこと」を明確にすることでおさまる」、「身近な友人、知人、恩師などが喜んでくれそうなことを1週間に5回行うと幸福度が高まる」(ヒューストン大学ラッドらの研究)、など、誰でもどんな環境でもすぐに、簡単に実践できるものばかりです。
職場や家庭で忙しく働き、ストレスが溜まると、元気がなくなったり、つい、イライラしてしまうこともあると思いますが、「元気がない、負のオーラをまとってしまうと、人も運も離れてしまう」と著者は言います。
この本に書いてあるアクションの中から、一つでも二つでも、今日から生活の中に取り入れてみることで、自分に元気と笑顔が生まれ、まわりにも笑顔が増え、いろいろなことがうまくまわりだすかもしれません。
公開日:2017年09月22日
みなさんは、情報をどのように探し、使っていますか?そして、それは正しい情報でしょうか?
近年、インターネットの普及により、不特定の「発信者」が爆発的に増大し、その情報がファクト(事実)なのかフェイク(虚偽の情報)なのかがどんどん分からなくなってきました。あまりに情報があふれ過ぎて、人々は現実を知ることが苦痛になり、あきらめ、無関心になり、手軽に手に入る情報をつかまえて満足し、それについて疑問さえも持たないような状況になっています。
著者はこの本で、自身が、新聞社、雑誌編集部などの記者としての経験から身につけた、「信頼できる情報をマスメディアから見つける」「どれが事実なのかを見つける」方法を具体的に紹介しています。
例えば、「証拠となる事実の提示がない『オピニオン』(意見)は全部捨ててかまわない。」「発信者が誰かわからない情報は捨ててかまわない。」そして「『記者が何を書いたか』ではなく、むしろ『何を書かなかったのか』に注意を向ける習慣を身につける」などの方法で、章ごとにまとめのポイントを示して、実践できるように説明しています。
また、公開されている情報を調査するには、グーグルやヤフーなどのネット検索エンジンを信用せず、「図書・書籍を調べること」が必要であるとしています。ネット情報ではなく、なぜ出版物なのかという根拠は、「本を出すことの意味」にあり、本を出版するためには「長い期間のコミットメントと知的作業」つまり「調査・取材・執筆にかける力が相当に必要」であるからとしています。と同時に、情報を信頼できるかどうかは「媒体」よりは、信用できる発信者が誰であるかの方が重要であるとも言っています。
情報があふれる中、この本を読んで、「その情報は事実に基づいているのか、いないのか」について、判断する力、問う力を身につけてみませんか。